臨床心理職のカリキュラム開発は、米国と英国が世界をリードしています。米国では既に1940年代に心理専門職の国家(州単位)資格化が進み、さらに1980年代に本格化したエビデンスベーストアプローチを軸として臨床心理学の体系化が進み、博士課程カリキュラムが発展しました。
英国では保健省が1989年に国立保健機構(National Health Service:NHS)の職員として正式に心理職を採用する方針を固め、1995年には養成大学院博士課程の制度が確立して研修制度を含むカリキュラム充実が進みました。さらに、2007年より認知行動療法(CBT)の訓練システムを充実させ、多くの国民が心理療法サービスにアクセスできるシステム構築を広範囲に展開する国家レベルのプロジェクト(Improving Access to Psychological Therapy)が開始されています(http://www.iapt.nhs.uk/)。
認知行動療法は、うつ病や不安障害などへの介入の有効性が実証的に示されていることによって、英米圏の国々ではメンタルヘルス活動全般において中心的方法として取り入れられ、発展してきています。導入が遅れていた我が国の臨床心理学においても、認知行動療法への関心が高まっています。
2010年より、限定はあるにしろ、認知行動療法の保険点数化が開始されました。しかし、我が国の臨床心理学では、まだ認知行動療法の重要性についての意識が強くなく、むしろ一般の市民や患者さんのほうが認知行動療法を強く求めているといった状態です。
公認心理師が導入された後は、臨床心理学の活動の有効性を示すためにも認知行動療法の活用は必須となっています。それとともに、これまで心理力動的な個人心理療法を軸として発展してきた“心理臨床学”を、認知行動療法を軸として多職種協働チームによってコミュニティで心理支援を展開できる「臨床心理学」に再構築していく作業も必要となります。
そこで、臨床心理iネットでは、臨床心理学を再構築し、認知行動療法を活用した多職種協働による心理支援を展開するために役立つ良書を解説・紹介する映像を、ICT(情報通信技術)を活用して皆様に広く提供することにしました(※映像は現在準備中です。良書の一覧のみ掲載しています。)
また、今後公認心理師の試験において重視されることになる心理学全般に関連する良書も紹介することにしました。取り上げる書物の解説・紹介は、できる限りその書物の制作に関わった著者、編者、訳者自身にお願いしたいと思っております。
今後は、皆様から推薦された書物も取り上げ、その著者や訳者に解説・紹介をお願いする企画も発展させていく予定です。また、そのような理論や技法を学ぶための研修会、シンポジウム、セミナー、ワークショップを積極的に開催していくことも企画しております。 皆様の理論学習や技法訓練の機会としてご利用いただければ幸いです。