臨床心理学の「知」をより身近なものに
一般社団法人 臨床心理iネット
代表理事 中野孝昭
平成26年3月14日、一般社団法人臨床心理iネットを設立いたしました。その目的は、臨床心理学の「知」によるメンタルヘルスの普及と促進にありますが、その手段としてインターネットを基盤とする様々な情報・コミュニケーション技術を活用していきたいと考えています。
私は、これまで複数の企業で、エンジニアリングや情報技術、それらのマネジメントに関わった後に、大学の産学連携本部において大学の研究成果を産業化し社会に伝える仕事をしてきました。このような経験を踏まえ,臨床心理学の「知」を社会に伝えたいと考え臨床心理iネットを立ち上げました。
人という存在について考えるとき生物-心理-社会モデルという視点が大切となります。ところが、これまでの日本の臨床心理学は、心の問題を扱うが故に、生物的な側面を扱う医学や労働・福祉政策等を対象とする社会科学に比較すると思弁的志向が強く、「本当に役立っているのか」という有効性を科学的に検証する作業を曖昧にしてきたように思われます。
しかし、近年の臨床心理学の発展はこの曖昧さをエビデンスベイスト・アプローチによって克服してきました。その結果、多くの心理的問題に対して認知行動療法の有効性が明らかとなってきています。いわゆる科学者-実践者モデルとしての取り組みが成果を上げてきたわけです。そこで,臨床心理iネットが提供していく「知」は,認知行動療法を中心とする内容になります。認知行動療法は行動理論と認知理論から構成されてきたことからも分かるように、1つの支援方法と言うよりは様々な基本的技法を実証された有効性をもとに体系化し、個別性を尊重したプロセスも併せ持つ「知」のシステムとみなすことができます。
臨床心理iネットでは、サービスを提供する対象として2つのグループを想定しています。ひとつは、ご自身のメンタルヘルスの問題に取り組んでいる一般の人々のグループです。ここでは、なるべく多くの人々が気軽にアクセスできるようにICTを活用して心の問題解決支援のサービスを提供します。もうひとつは、現場で役立つ臨床心理学をもっと学びたいと考えている心理専門職の人々のグループです。ここでは、ICTを活用して臨床心理学の最新知見や必須技能を学ぶ場を提供するとともに心理専門職のネットワークを形成していきます。
臨床心理iネットは、現場で役に立つ臨床心理学の新しいかたちを提供するために誠心誠意努力して
一般の皆様、臨床心理学をはじめとするメンタルヘルス関係者の方々のご協力を 心からお願い申し上げます。
代表理事 履歴
- 1982年3月
- 東京大学大学院 船舶工学博士課程 単位取得退学
- 1982年4月 – 1987年3月
- 川崎重工株式会社 船舶事業本部
- 神戸工場にて、船舶の構造・振動設計、製品開発業務に携わる
- 1987年4月 – 1999年3月
- 株式会社 リクルート
- スーパー・コンピューターによる科学システム事業部にて、主任研究員、技術マネージャー
- メディア・デザイン・センター並びに情報システム部に所属し、不動産データベース事業の企画・技術面を支援
- ドイツ SAP社ERPシステムの人事管理アプリケーションの日本版開発と事業立ち上げに携わる
- 1999年4月 – 2005年3月
- SAP ジャパン 株式会社
- SAP Labs 東京にて 製品リリースマネジメントを担当
- SAPジャパンの製品管理部ディレクターとして全製品の技術・開発関連マネジメントを統括
- 2005年4月 – 2011年3月
- 横浜国立大学 教授
- 産学連携推進本部 副本部長として、共同研究、知的財産、研究推進のマネジメントを遂行
- よこはまティーエルオー株式会社 取締役
- NPO法人 YUVEC 理事
- 2012年8月– 2014年3月
- 東京大学大学院教育学研究科附属バリアフリー教育開発研究センター特任研究員
- 臨床心理学とICTの統合に関する開発業務に関わる。
- 2014年3月– 現在
- 一般社団法人臨床心理iネット設立と同時に代表理事に就任。現在に至る。