国家資格化された心理職である公認心理師がより有効な心理支援活動を行うためには、その教育訓練カリキュラムを充実させることが、第一に重要となります。では、社会的ニーズに応えるためには、どのようなカリキュラムが必要でしょうか。現在行われている日本臨床心理士資格認定協会が規定しているカリキュラムで十分でしょうか。
近年、精神科患者の増加に対応し、コミュティにおける多職種協働チームによるに支援の必要性が高まり、チームの一員としての心理職の重要性が増しています。さらに、心理学的介入の有効性が効果研究によって実証されたことからも心理職へのニーズが高まってきたということもあります。その結果として、心理職の国家資格化が求められるようになり、心理専門職養成カリキュラムの構築が強く求められるようになってきたという経緯があります。
このような社会的要請を受けて、2008年には日本学術会議分科会において統一的な心理学カリキュラム(http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-20-t55-2.pdf)が示され、「医療活動に従事する職能心理士の国家資格法制の確立を」との提言(http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-20-t62-8.pdf)も出され、社会的にも学術的にも心理専門職(Professional Psychologist)の養成プログラム確立が緊急の課題となりました。
さらに、2013年には心理学全体として心理職の国家資格化の推進と能力向上を目指して日本心理研修センター(http://shinri-kenshu.jp/)が設立されました。これは、現行の日本臨床心理士資格認定協会の臨床心理士養成システムが、社会的要請に適切に応えられていないとの判断があったからです。
日本心理研修センターでは、公認心理師の活動モデルとして、「実践者―科学者モデル」を挙げています。しかし、現代のメンタルヘルス活動においては、多職種協働チームによる支援が重要なテーマとなっています。そのような多職種協働の前提となるのが、「生物―心理―社会モデル」による問題理解です。したがって、教育訓練カリキュラムを開発していくうえでは、「実践者―科学者モデル」と「生物―心理―社会モデル」の両モデルに基づくカリキュラム開発が必要となっています。
そこで、臨床心理iネットでは、臨床心理職にとって望ましい教育訓練カリキュラムとは何かを研究し、その成果を随時、皆様方に提案していくことにいたします。また、そのようなカリキュラムを実践していくための研修会、シンポジウム、セミナー、ワークショップを積極的に開催していくことも予定しております。臨床心理職としての学習あるいは教育の参照モデルとして活用していただければ幸いです。