臨床心理iネットでは、広く一般市民社会および臨床心理サービスに係わる方々に対して、コミュニティの構築、情報の共有、サービスの提供、人材の育成等に関する事業により、メンタルヘルスの普及と促進を実現します

研究の最新動向紹介

我が国では、臨床心理学を、単にカウンセリングや心理療法の学派の集合体として理解する傾向が強いといえます。しかし、心理職の国家資格化という社会的要請に応えるためには、臨床心理学の体系的な統一性が求められています。専門的な社会的活動という点で、医学、看護学、教育学、社会福祉学、行政など他の専門領域からみた場合、臨床心理学がさまざまな学派や理論に分かれていて統一性がないのでは、社会的な連携をとっていくのが難しいと感じられるのは当然です。

確かに臨床心理学は、さまざまな起源をもつ理論が集まって形成されてきた歴史をもっています。したがって、専門的な学問として、そして社会的な活動として統一性をもつ段階に達することは、臨床心理学の発展としても大きな意義を持つものです。したがって、臨床心理学が一貫した学問体系を備えた実践科学として、医師、看護師、教師、社会福祉職、行政職をはじめとする他専門職と協働して心理援助の専門活動を展開することが、今後の最重要課題になります。

医療、福祉、産業、教育、司法・矯正といった多様な領域において、研究によって有効性が実証的に認められた方法を用いて、メンタルヘルスの問題解決に取り組んでいかなければなりません。近年の臨床心理学は、エビンデスベーストアプローチと呼ばれ、これまでの臨床心理学が対処できなかった問題に対しても有効な介入法を開発しつつあります。

また、ポストモダンと呼ばれる、高度の情報化が進んだ現代社会に対応して、一人一人の利用者の語り(ナラティヴ)を尊重することを通して、人々の生活を支援するサポートネットワークを、多職種と協働してコミュニティに形成していく活動も展開しています。

したがって、公認心理師の時代になった場合、臨床心理学は、単なる臨床心理士の数の増加という量的変化だけでなく、社会的機能と組織を備えた専門的活動に向けての質的な転換を成し遂げることも求められています。これは、これまで個人心理療法が中心で、しかも心の内側に焦点を当てる方向での議論が多かった日本の臨床心理学が、社会という場において専門性を発揮できる方向への拡大発展を求められているということです。

PAGETOP

Copyright © 一般社団法人臨床心理iネット All Rights Reserved.